呼吸器内科では、肋骨に囲まれた胸郭内の中で、心臓・大血管、食道を除いた気管・気管支・肺、胸膜・胸壁、縦隔に起こった疾患を扱います。具体的には、腫瘍性疾患、呼吸器感染症、アレルギー・炎症性疾患、慢性閉塞性肺疾患(喫煙関連)、職業性肺疾患、肺血管性疾患、呼吸の異常、呼吸不全などの病気を診療しています。
呼吸器内科では肺がん、びまん性肺疾患(特発性間質性肺炎、膠原病関連間質性肺疾患、過敏性肺炎など)、COPD、気管支喘息、呼吸器感染症など多岐にわたる呼吸器疾患を幅広く診療しています。
日本における病因別の年間死亡者数の第一位は悪性腫瘍であり、その中においても肺がんは単独で年間約7万人という膨大な数であり、残念ながら第一位という状況です。当科は大学病院の呼吸器内科として、地域の最先端の診療を担っているという自負のもと、肺がん診療における高度な気管支鏡検査を得意としております。
近年、カメラの細径化に加えて、肺内の目的部位までの気管支のルートを案内してくれる仮想気管支鏡(Virtual bronchoscopic navigation system)や、肺内病変を超音波でリアルタイムに探ることのできる経気管支超音波断層法(EBUS:Endobronchial Ultrasonograpy)、さらに病変から繰り返し生検できるための鞘であるガイドシース法、そして縦隔リンパ節をリアルタイムに気管支内側から観察して穿刺吸引できる経気管支縦隔リンパ節超音波針生検法(EBUS-TBNA:Transbronchial Needle Aspiration)、経食道気管支鏡超音波針生検法(EUS-B-FNA:Endoscopic ultrasound with bronchoscope-guided fine-needle-aspiration )等が開発され、当科でも各種デバイスが全て導入され稼働しております。さらに局所麻酔下胸腔鏡検査による胸水貯留、胸膜炎、胸膜病変の診断や、通常の経気管支肺生検よりも大きな組織を採取することの可能なクライオバイオプシー(凍結肺生検)などの最先端の診断機器を導入しています。当科では年間250件以上(2024年度は255件)の気管支鏡検査を行っています。気管支鏡検査は日帰り施行の施設もありますが、当院では安全性を最優先し、質も担保するために、基本1泊2日で施行しております。検査時間は約1時間程度。鎮静剤併用にて施行するため、施行後は8割以上の患者さんが「覚えていないし、つらくなかった。」と感想を述べられます。なお、検査結果は約1週間後の外来での説明となります。気管支鏡検査の適応の判断および予約は毎日の呼吸器内科外来で対応しております。
これまでの20年間、肺がんの診断と治療は日進月歩で進化し治療効果は格段に向上しました。特に2005年以降は肺がんのがん遺伝子の同定と分子標的薬の開発が進み、2015年以降はがん免疫治療が瞬く間に標準治療となりました。さらに近年では手術可能な肺がん症例で術前術後に免疫治療を行うことで術後再発を抑制できるようになり、肺がん治療は呼吸器内科と呼吸器外科、放射線治療医がシームレスに連携し集学的に治療する時代となりました。我々の施設では肺がんの診断時には遺伝子パネル検査を用いたがん遺伝子の同定や免疫治療の効果予測マーカーの評価を積極的に行い、FDG-PET検査やMRI検査などで正確なステージ分類を行っています。さらに、毎週月曜日に呼吸器内科、呼吸器外科、放射線科の専門医が集合しカンファレンスを定期的に開催しており、個々の患者さんに最適なエビデンスに基づいた治療の選択に心がけております。
びまん性肺疾患の分野では、診断のレベルを上げるために、必ずカンファレンスで相談し、どのようにアプローチするかのディスカッションを行いながら診療をしています。臨床情報、画像のみならず、気管支鏡検査(気管支肺胞洗浄やクライオバイオプシー)を積極的に行い、必要あれば呼吸器外科とも連携し外科的肺生検も施行いただいた上で診断を行なっております。Webを利用して、放射線診断医や病理診断医と私たち呼吸器内科医によるMDD(multidisciplinary discussion)を定期的に開催しており、びまん性肺疾患の診断治療のレベルアップを行なっています。
また、膠原病関連肺疾患に関しては膠原病を診療されている院内の各診療科と膠原病検討会を通じて常に相談できる体制を取っております。
現在、日本で患者数が増加し続けているCOPDや、気管支喘息などの慢性呼吸器疾患に対しては、院内のみならず、地域医療の中での多業種連携を推進し、多方面から患者さんの治療と生活を支える、総合的診療を行っています。また、気管支喘息、慢性咳嗽、COPD患者では呼気中一酸化窒素濃度測定による気道炎症の評価、モストグラフや各種呼吸機能検査を用いた客観的評価に基づく、最適の治療を提供しています。また、2015年6月より、重症気管支喘息に対する気管支鏡治療である「サーモプラスティ」を開始し、最先端の治療が可能となりました。各種バイオ製剤も多数の重症喘息に導入しています。